海外のHVAC・空調市場ー2022年までの動向予測

世界のHVAC市場は今、どのような動向を見せているのでしょうか。またこの市場動向に合わせ、日本大手メーカーは、どのような動きを見せているのでしょうか。2つの市場調査レポートから、その動向を読み解きます。

HVACとは

HVACという言葉、空調業界の方はご存じかもしれませんが、日本ではあまり一般的ではなく聞き慣れない言葉です。

HVACは、「Heating, Ventilation, and Air Conditioning」の略で、「暖房・換気・および空調」という意味です。日本の家屋では、暖房は暖房器具、冷房は冷房器具、そして換気はまた別の換気扇で、という考えが長い間一般的でした。そのため、これらをまとめて呼ぶための言葉が、あまり必要とされなかったのです。

しかし欧米では、いわゆるセントラルヒーティング、フォースドエアシステムが主流であり、暖房・冷房・換気を一括で行う仕組みが進化してきました。日本でも、ホテルや病院、ビル、商業施設ではこの方式が取り入れられています。

近年では、日本国内の建物についても総合的な空調システムが導入されています。また、日本の空調メーカーが海外での販売を拡大し、セントラルヒーティングに対応した空調システムを取り扱っています。こうしたことから、冷房・暖房・換気を指すHVACという言葉が使われるようになってきました。

HVAC空調市場の動向

海外でのHVAC空調市場はどのような推移を見せているのでしょうか。2社による市場調査から、今後のHVAC空調市場の動向を見てみましょう。

Transparency Market Researchの市場調査

Transparency Market Researchは、市場動向調査「HVAC機器市場 - 世界の産業分析、規模、シェア、成長、トレンドおよび予測2014-2022」を発表しました。

このレポートでは、2014~2022年における世界のHVAC市場は6.20%のCAGR(年平均成長率)で拡大すると推測しています。

また、同社が2018年1月に発表した記事によると、2013年に913億ドルだったHVAC機器市場は、2022年には1551億ドルに増加するとの予測です。

この要因として、新興国の建設ラッシュ、各国の省エネルギーへの取り組み、スマートハウスへの投資拡大を挙げています。また、ビルオートメーションシステムの導入、地球温暖化対策冷凍機の開発、住宅暖房への再エネ利用などが、新たなトレンドを作る可能性があるとしています。

Technavioの市場調査

一方Technavioでは、世界のHVACに関するダクトの市場について、調査レポートを発表しています。

レポートでは、シートメタルダクト・フレキシブル非金属ダクト・グラスウールダクトボードに市場を分けて分析。これらを合わせたダクト市場は、2021年には46億1000万ドルに達すると予測しています。また2017年~2021年において、5%以上のCAGRで安定した成長が見込まれるとしています。

需要の動向には、省エネに対する意識の高まりが影響すると予測しています。また、より遮熱・断熱性の良いダクトの需要が高まり、製造工程での必要エネルギーが少ないダクトが多く採用されていく予測です。

進むHVAC企業の統合

このように膨らみ続けると予測される世界のHVAC市場に対し、大手企業の統合が進んでいます。

2015年、日立製作所と米国ジョンソンコントロールズは、合併会社ジョンソンコントロールズ日立空調を立ち上げました。売上高3500億円、従業員1万4000人の規模となります。日立の高効率冷蔵技術、ジョンソンコントロールズのHVAC技術が集結し、お互いの販売チャネルを補完し合う形で、さらなる市場拡大が見込まれます。

また、東芝も米国企業との連携を進めています。2014年にユナイテッドテクノロジーズ社と提携、業務用空調事業を中心に戦略的連携を深めていく方針です。

三菱電機はイタリアのデルクリマ社を子会社化、欧州市場で需要の高いチラーを中心に、大型業務用製品の強化を図っています。三菱電機の主力製品と合わせ、家庭用から業務用までをカバーする欧州ナンバーワンHVACメーカーを目指すとしています。

このような海外HVAC事業強化において、いち早く海外市場の開拓を開始したのがダイキン工業です。2006年、大型業務用空調分野で当時世界4位のOYLインダストリーズの買収に成功。さらに2012年には全館空調機のリーディングカンパニー、グッドマン社を買収しています。このような取り組みから、今では2兆円を越す売上高(2017年決算 PDF)を誇る世界有数の空調機器メーカーとなっています。

世界のHVAC市場はこれからも拡大する見通し

海外のHVACとエアダクト市場について解説しました。2社の市場調査が示す通り、今後も世界のHVAC市場は膨らみ続けると予想されます。これと同時に、日本の大手をはじめとしたHVACメーカーのシェア争いは、ますます激化していくと思われます。