東南アジア(ASEAN)における日本企業の進出ーその実態と理由とは

今、東南アジアに進出する日本企業が増加していますが、それはなぜでしょうか。東南アジアへの進出の実態を見ながら、その理由を探ります。また、これから進出が加速することが予測される国と、その背景を解説します。

日本企業のASEAN進出が増加

東南アジアの10カ国により形成されるASEAN共同体。ASEANへの日本企業の進出は、どのような実態となっているのでしょうか。

帝国データバンクは、「ASEAN 進出企業実態調査(PDF)」を2016年に公表しました。これは企業概要データベース「COSMOS2」および信用調査報告書ファイル「CCR」などを基にした、 2016年4月末時点での集計結果です。

これによると、ASEANに進出している日本企業は11,328社に上るとされています。日本企業の進出が最も多い国は、タイで4,788社、次いでシンガポールに2,821社、ベトナムに2,527社となっており、タイが進出先としてもっとも多くの割合を占めていることがわかります。

また業種別では、製造業が4,925社と最も多く、2位の卸売業2,825社を大きく引き離しています。

規模別で見ると、売上高100億円以上の企業が2,890社で25.6%と、全体の1/4を占めています。一方、売上高1億円未満の企業も601社、5.4%となっており、規模が大きくない企業もASEANへ多く進出していることがわかります。

日本企業がASEANに進出する理由とは

なぜこのように、ASEANへ進出する日本企業が増えているのでしょうか。その理由として次の3つがあげられます。

人口推移と生産者人口

国際機関日本アセアンセンターが発行した「ASEAN 情報マップ (PDF)」には、ASEANの実状と未来予測、日本や各国の企業との関わり方などがまとめられています。

このなかでは、1980年には3.6億人だったASEANの人口が、2016年には6.37億人に到達していることが報告されています。2030年には、ASEAN全体の人口は7.3億人に達すると予測され、市場としての期待値はさらに膨らむ見込みです。

また、年齢別の人口分布で見たとき、高齢者人口の多い日本とは異なり、ASEANでは若年層人口が多い点が注目されています。高齢化社会を迎える日本では、生産者人口の減少が懸念されていますが、ASEANは豊富な生産者人口を抱えています。このことからも、ASEANが市場として、また企業の拠点としても有望であることがわかります。

高い経済成長率

みずほフィナンシャルグループの調査(PDF)によると、ASEANの経済成長率は5%前後と世界経済の平均を上回る成長を見せています。GDPを見てみると、ASEANは日本のおよそ半分です。しかしGDP(PPP)では、数年前から日本を大きく上回っています。このようにASEANは今後も順調な成長を続けていくことが見込まれています。

ASEAN経済共同体(AEC)発足

2015年、ASEAN経済共同体(AEC)が発足しました。これにより関税が撤廃され、より活発な貿易が可能となり、人の移動も自由化されます。こうして単一市場化されることで、ヒト・モノ・カネの動きが自由化し、AECとしての経済競争力を向上させる狙いです。日本経済新聞によると、この共同体は、総生産2.5兆ドル(約300兆円)の巨大な経済域となり、ASEAN域内各国のさらなる成長にもつながると見られています。

日本企業の進出が加速する国とは

2011年から2016年の間、最も日本企業の進出増加率が多かったのがミャンマーです。これは東洋経済新報社の調査で明らかになりました。ミャンマーは「アジア最後のフロンティア」として注目されているのです。

この背景として、アウン・サン・スー・チー氏の活動により、米政府からの経済制裁が解除されたことも要因として大きいと考えられます。同氏は、日本企業へも積極的な投資を呼びかけています。

また、ミャンマーを含む4カ国を、高速道路や橋によって結ぶ南部経済回廊というプロジェクトも進んでいます。これにより、ASEAN内で日本企業が最も多く進出しているタイとも結ばれるため、さらに進出を後押しする形になるでしょう。

これらの働きに加え、他国に比べ労働賃金が低廉であることもあり、今後さらにミャンマーへの進出は活発化すると予測されます。

ASEAN進出はさらに加速する見込み

ASEANへの日本企業の進出について、実態と今後の予測を解説しました。ASEAN経済共同体の発足、ミャンマーの民政移管など、東南アジアエリアに大きな変化が訪れています。これに伴い、今後さらに日本企業のASEAN進出は加速する見込みです。