ホームセンターとeコマースー市場動向と融合戦略

ホームセンターとeコマース。この2つの市場は、それぞれどのような動向を見せているのでしょうか。市場調査の結果を見ながら、ホームセンターとeコマースはどのように関わっていくのかを考えます。

堅調なホームセンター市場

矢野経済研究所は2017年、国内ホームセンター小売市場に関しての動向調査と予測を発表しました。

これによると、国内ホームセンターの市場規模は、2014年度に3兆9,260億円、2015年度に3兆9,530億円、2016年度に3兆9,850億円となっています。また、これらの結果と市場の動向から、2017年の市場規模は3兆9,980億円に達すると見込まれています。前年比はそれぞれ100.7%、100.8%、100.3%(予測)と、堅調ではあるものの横ばいとなっているのが分かります。

この矢野経済研究所の調査は、日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会の調査結果をベースとしています。こちらの調査では、市場の規模に加え全国のホームセンター店舗数についても推移を見ることができます。

全国のホームセンター店舗数について、2014年は4,590店、2015年は4,650店、2016年は4,710店と増加を続けています。売上高は横ばいとなっている一方で、なぜ店舗数は増加の一途をたどっているのでしょうか。それは、店舗数は増加しているものの、1店舗当たりの売り上げが小さくなっているからです。しかしこれは、ホームセンターがより身近で気軽に利用できるものへ変化しつつあることを示していると言えるのではないでしょうか。

この主張を裏付けるような結果が表れているのが、中小企業基盤整備機構が行ったホームセンターに関するwebアンケートです。

ホームセンターの利用率を聞いたところ、「よく利用している」「たまに利用している」を合わせた結果は全体では87%と、非常に高いことが分かります。年代や性別ごとに見ると、20代は男女ともにそれが70%台と少し低めの結果になっています。しかし30代では、女性の利用率が94%と、高い利用率を示しており、30代女性にとってホームセンターは身近な存在であるといえるでしょう。一方、男性は30代の利用率は女性ほど高くなく、40代以降50代、60代と年代が上がるにつれて利用率が高くなっていく傾向にあります。女性は30代が高い一方で、40代からは利用率が下がっていくという結果が出ています。

利用頻度では、「月に1回利用している」と答えた人が30%で、全体では「月イチ利用者」が多いといえるでしょう。層別では、60代男性のうち「月に1回以上利用している」が70%、「週に1回以上利用している」が14%と、60代男性が特に頻繁に利用する傾向にあることが分かります。

市場規模の拡大を期待するのは難しい今、ホームセンターにはどのような販売戦略が必要なのでしょうか。これまでの客層に加え、20代および40代以降の女性、30代の男性を取り込んでいくことが、ホームセンターの生き残りの道なのかもしれません。

拡大するeコマース市場

ホームセンター以上に「何でもそろっている」場所といえば、今なお拡大し続けているインターネットでのeコマース市場です。

野村総合研究所が2017年に発表した、EC市場を含むICT・メディアに関する調査では、その市場動向が予測されています。ここでは、「インターネットを経由して一般消費者向けの商品またはサービスを販売」することをBtoC ECとしています。

これによると、BtoC ECの市場規模は2016年に16.6兆円、2017年には18億円になると推計されています。さらに市場は6~7%の年成長率を維持するとされ、2023年の予測市場規模は25.9兆円です。このように、EC市場は今後も拡大し続ける見通しとなっています。

進むオムニチャネル化

しかし、実店舗による販売形式が淘汰(とうた)されようとしているわけではありません。実際にホームセンターの小売市場は堅調であり、店舗数を増加させるという投資が続いていることを考えれば規模は拡大していると考えることもできます。

また、BtoC EC市場の伸び率を大きく上回っているのが、オムニチャネル・コマースの市場規模です。オムニチャネル・コマースとは、最終的に実店舗やオンライン店舗をはじめとするあらゆるチャネルでの購買を促す戦略をいいます。ホームセンターの小売市場も、このようなオムニチャネル・コマースに活路を見出しています。

全国で200店舗以上を展開するカインズでは、カインズ公式アプリとしてスマートフォンやタブレット向けのアプリを配信しています。アプリ内には会員カード機能や最寄り店舗の検索機能を備え、工具の使い方動画も見ることができます。

業界最大手の一つであるコメリでも、同様にアプリを提供しています。商品検索機能、各店舗のチラシ閲覧、ポイント確認機能に加え、リフォームの見積もりについての概要も見ることができます。

このほか、各ホームセンターグループにおいても、インターネットによる注文や店舗配送、チラシの掲載など、オムニチャネル・コマースが活発化しています。

ホームセンターとeコマースの融合

堅調なホームセンターの市場動向と、拡大し続けるeコマースの市場規模から、ホームセンターのこれからを考えました。ホームセンター、そしてeコマース。この2つは相反するものではなく、オムニチャネルにより融合していくものなのかもしれません。