人類の発展と文明を支え続けてきた鋼板は、どのような規格があり、どのように分類され、どのような場所で使われているのでしょうか。あらゆる産業のキーマテリアルともいえる鋼板について、その定義や規格を解説します。
鋼板とは
鋼板は一般的に板状に加工された鋼のことをいいます。
辞書や百科事典などでは、それぞれ次のように定義されています。
“板状に圧延した鋼材。厚さによって薄鋼板,中鋼板,厚鋼板に,圧延の方法によって熱間圧延鋼板と冷間圧延鋼板に大別され,その他,形状や加工の別によって帯鋼,化学処理鋼板,化粧鋼板などに類別される。それぞれに多くの種類のものがあり,特にストリップ・ミルにより薄鋼板の高品質化が進み,薄鋼板を用いた鋼板品種は多様化してきている。日本工業規格 JISに詳細な規格が設けられている。”
(引用:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
“鋼塊を圧延してつくる板状の材料の総称。鋼板には厚板とそうでない薄板とがある。厚板plateと呼ばれる鋼板はふつう厚さ3mm以上のものをいい,とくに成分と製造の際の温度履歴とが注意深く管理されている。”
(引用:世界大百科事典 第2版)
また、一般社団法人日本鉄鋼連盟のWebサイトでは次のように説明されています。
“平らに熱間圧延または冷間圧延された鋼で、平板状に切断された鋼材。鋼帯からの切板も含みます。”
(引用:主な鋼材の形状別分類)
鋼板の規格
鋼板の規格には、さまざまなものがあります。日本工業規格(JIS規格)のほか、新日鐵規格やJFE規格などの各鉄鋼メーカー・ユーザーによる規格が存在します。また、自動車向け鋼板に関しては日本鉄鋼連盟規格(JFS規格)もあります。さらに世界各国に規格があり、国際的標準化が難航している分野でもあります。
また、国土交通省の公共建築工事標準仕様書においては以下のように規格が整理されています。
鋼板の分類
鋼板はその厚さや種類、材料、加工特性、使用目的などで分類されます。
厚さでの分類
一般的には厚さ3mm未満のものを薄鋼板、3mm以上のものを厚鋼板といいます。しかし製鋼業界、鉄鋼業界ではこれをさらに細かく分類して呼び分けています。
(出典:【 鋼板の種類 ① 】|株式会社広光ホーム(PDF)を元に作成)
材料・加工特性での分類
JISでは加工特性からの体系によって鋼板が規格されています。以下に代表的なものをまとめました。
(出典: JIS規格体系の概要|NS Fellowsを元に作成)
なお、このうちダクトにはSGCCが主に使われています。
抗張力での分類
近年では主に自動車産業において、軽く・薄く・強くという特性を満たす「ハイテン」と呼ばれる高張力鋼板の需要が高まっています。このハイテンの持つ強度と加工性といった観点から、鋼板は抗張力によって分類されることもあります。これは鉄鋼メーカー規格で表されることが多く、新日鐵規格であればSANHやSANC、JFE規格であればJFE・CAといった表記が使われています。
用途による分類
また用途での分類もあります。ここではSS400、S35C、SPA-Cなどの、用途に合わせた専用規格が使われます。
鋼板の用途
用途による体系での分類も規格化されていることから分かるように、鋼板の使い道は多岐にわたります。
- 鉄塔、橋梁(きょうりょう)、建築、船舶などの構造材
- 産業機器や産業車両
- 自動車の外装・足回り・保安部品
- 溶接鋼管や圧力容器
- 制御盤や配電盤などのキャビネット
- 空調、排気や換気などのダクト
このほかにも、鋼板はあらゆる産業において適した種類のものが使われ、人類の生活に密接に関係しています。
スパイラルダクトの材質
上記のうち、スパイラルダクトに使われるものだけでも次のようにさまざまな種類の材質があります。
最も多く使われているのは、亜鉛めっき鋼板を使ったスパイラルダクトです。仕様について特に指定がない場合、この素材がが使われることとなります。また耐食性と耐熱性を重視した場合、ステンレス鋼板が選ばれることもありますが、コストに優れた塩ビ鋼板もよく使われます。
最近ではガルバリウム鋼板、スーパーダイマといった新素材による鋼板も開発され、ダクトの耐久性向上を可能にしています。
鋼板は文明を支えている
鋼板はその重要性から、さまざまな特性を持ったものが開発され、このように細かい体系化が進み、規格化されてきました。また、今なお研究が進められ新素材の鋼板が開発されています。このように、鋼板は文明の発展を支えるものとしてあらゆる分野に使われ、現代社会に欠かすことのできないものなのです。