ダクトのリフォーム市場はなぜ期待されているのか

ダクトのメンテナンスやリフォームの分野に注目が集まっています。ダクト業界の過渡期ともいえる平成30年代に、ダクトのリフォーム市場はどのような動きをみせるのでしょうか。また、ダクト業界がリフォーム市場に注目する理由について解説します。

ダクト市場の変化

国内ダクト業界において、その市場規模はどのように推移しているのでしょうか。

空調大手4社にみる市場動向

空調大手4社(高砂熱学工業、大気社、ダイダン、三機工業)の決算結果とそれぞれの前年比が、日刊建設工業新聞に掲載されました(※1)。これによると、空調設備工事関連の市場について複雑な動向を見ることができます。

空調関連工事において、大手4社すべてが増収と順調に見えます。しかしこれは、首都

圏中心の開発工事と各社の利益改善策が効果を発揮した結果です。地方を含めた空調関連工事の受注状況を見た場合、市場が伸びているとはいえない状況であることが分かります。

受注高でみると、プラント設備の工事受注に成功した三機工業を除き、3社は軒並み落ち込んでいます。また三機工業についても、ビル空調衛生の受注高は15.1%減、建築設備全体で4.2%減と前年同期を下回っています。

このように、業界大手が事業の柱としているビル空調工事の件数・規模が縮小傾向にあり、また受注高も減少しています。これは国内の空調・衛生分野の工事受注が一巡したことが一因であると考察されています。

国内のダクト工事事業者

国内のダクト工事事業者は、およそ2,000社あるといわれています。しかし、全国ダクト工業会に登録されている事業者数は約500社で、実際の現場で作業している個人事業主も含めると、3,000以上存在すると考えられています。

このように、大手だけでなく中小規模の事業者も含めると膨大な数が存在するダクト工事事業者ですが、伸び悩む空調関連市場において注目している分野があります。それがダクトのメンテナンスやリフォームなどの二次的な需要です。

ダクトの耐用年数からみる市場動向

ダクトのメンテナンスやリフォームといった、二次的需要に期待が高まる背景には、ダクトの耐用年数や、公共建築の中長期修繕マネジメントといった考えがあります。

ダクトの耐用年数

ダクトについて、法的に耐用年数は決められていません。しかし政府機関や団体が独自調査により、「計画耐用年数」として、修繕・更新の目安を定めています。空調設備や送・排風機、排煙機などの計画耐用年数は15年とされることが多く、これらと同時に交換、または数年をプラスして交換を推奨されています。

中長期修繕マネジメント

国土交通省は、2005年に「公共建築の部位・設備の特性等を踏まえた中長期修繕計画策定及び運用のためのマニュアル(案)」(PDF)を策定しました。これは総合技術政策研究センターが取りまとめたもので、その目的は公共建築物の修繕・更新を計画的に行い、厳しい財政事情のなかでも管理・対処していくためのものです。
このマニュアルは2015年に改訂、「中長期保全計画策定の考え方(案)」(PDF)として再び発行され、今後も継続的なマネジメントを推進していくことがうかがわれます。

このような中長期修繕マネジメントマニュアルにのっとり、自治体ごとに施設マネジメント計画が立てられています。空調ダクトや換気ダクトなどについて、劣化パターンや耐用年数が想定されている例を見てみましょう。

  • 青森県「青森県県有施設長寿命化指針」
    既存・長期使用庁舎における空調ダクト・制気口類、換気ダクト・換気口の耐用年数はいずれも30年とし、40年目に修繕が計画されている(※2)。
  • 京都市「京都市庁舎施設マネジメント計画」
    空調に関する配管類・ダクト更新として40年目に休館をしての改修工事が必要であるとしている(※3)。
  • 黒部市「計画保全(長寿命化)に対する考え方」
    80年をひとつの改修サイクルとし、40年目の大規模改修の際に衛生器具・空調ダクトの全面改修または更新が必要としている(※4)。

このように自治体による中長期修繕マネジメント計画から、ダクト需要の変動を予測することもできます。

バブル期の建設ラッシュ

上記の事から、ダクトのリフォームは30年~40年を目安に検討される場合が多いと考えられます。そしてそのカウント開始のタイミングを、建設ラッシュの時期に基づいて考えると効率的です。

1991年にバブルが崩壊するまでは多くの建設物が作られ、まさに建設ラッシュの時代でした。これらの建造物において、これからがダクトの計画耐用年数を迎えるタイミングです。このような理由から、ダクトのリフォーム市場に注目が集まっています。

住宅リフォーム市場の動向

また住宅においても、ダクト需要についてリフォーム市場が重要になっていくと予想されます。

野村総合研究所がまとめた「2025年の住宅市場」(PDF)によると、新設住宅着工戸数は大幅に減少していくと予想されています。しかし、住宅リフォーム市場は現状維持または微減の見通しとなっています。

また、政府も2020年までに「中古住宅流通市場・リフォーム市場の規模を20兆円まで倍増」させるとして、施策を検討、充実を図っています。

このように住宅市場の動向予測をみたとき、今後は相対的にリフォーム市場が拡大すると見られています。ダクト業界もこの動向に注目、住宅リフォームに合わせたダクト工事が、今後のダクト需要のカギとなると考えられます。

ダクトのリフォーム市場に注目

ダクトのリフォーム市場について、その動向とこれからの市場予測を解説しました。中長期修繕マネジメント計画によって、今後は公共建築物の空調や排気ダクトの改修工事が増える見通しです。また住宅においてもリフォーム市場の拡大から、ダクトの修繕・改修需要が増加すると予測されます。

このように、これからのダクト需要は住宅や公共建築物、またはダクト自体のリフォームと密接に関係していくと考えられます。今後のリフォーム市場の動向に、ダクト業界の注目が集まっています。

参照