建材を取り扱うECサイトは無数にあり、その競争は激化しています。建材店がECサイトを持つようになった歴史を解説し、またどのような建材ECサイトが生き残っていけるのかを予想します。建材業界において、今どのような変化が起きているのでしょうか。
建材とECの融合はここから始まった
建材店がECサイトを持つようになり、業界の販売形態は大きな変革を迎えようとしています。この流れがどのように起こったのかを見てみましょう。
eコマース(EC)の歴史
ECの歴史はインターネットの普及とともに進んできました。1990年代後半、PCが普及し通信インフラが整備されると、多くのITビジネスが生まれました。また、PCを持つ家庭が増えると同時に、大手インターネット通販サイトが登場します。楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazonなどから始まり、それまで店舗販売をメインとしていた企業も次々にECサイトを持つようになっていきました。
経済産業省が調査、公表した結果によると、2016年までの国内のECは年々増加しており、BtoB-EC取引における市場規模は204兆円まで拡大しています(※1)。また、全体のうちECによる取引の割合を表したEC化率について、BtoB取引全体の約1/5がEC化しているという結果が報告されています。
このように、今ではあらゆる業種において、EC化が進んでいることが見て取れます。
国内での建材とECの融合
建材業界においては、2000年にサンワカンパニーがECサイトをスタートさせたことから国内での建材ECサイトが増えていきました。Googleの日本語検索サービス開始が2000年、Amazonマーケットプレイスのオープンが2001年ですから、国内におけるEC黎明期(れいめいき)から建材のEC取引も始まったといえます。
その後DIYブームが到来、家庭用PCの普及と相まって個人購入が激増します。個人での購入が増えたこともあり、それまで都度見積もりが常識だった建材業界でも、価格を明示したECサイトが増えていきました。
この理由には、ECの特徴として人件費を大きく削減できるという点があります。削減したコストを価格に反映することができるため、価格競争に強いという大きなメリットがあるためです。
また、かつては建材メーカーからユーザーの手に渡るまでに、建材商社、建材小売店といった中間業者が間に入っていました。しかし現在では途中にECショップが入るのみという形が取られ、商流スピードという面でのメリットも大きくなっています。
そして世代の変化もEC普及をあと押ししています。建築業界においても、PCの普及とともにPC操作に抵抗のない年代が主力になりつつあり、ECの利便性が優位になっているのです。
これらの歴史を経て、今では建材ECショップに対し工務店やプロも注目するようになり、ECサイトを持つ建材店も多くなりました。
建材+ECの例と各店舗の特色
老舗の建材店や大手建材店によるECサイトの具体例と、それぞれの特徴をご紹介します。
- サンワカンパニー
日本初の建材ECといわれ、住宅設備の企画・販売、建築資材の輸入・販売が主。2016年にECシステムを一新し、多様かつ連動性を持った販売、分析、販促を可能とした。 - 建材屋 ONE ORDER
運営会社の加藤ベニヤは、1949年創業の老舗建材店。宅配便では取り扱いが不可能な長尺物や、サブロクサイズのものも、関東一円に無料配送するという点が大きな特徴。 - aunworks
取り扱い可能メーカー1,000社以上、登録商品点数135,000点以上を誇るプロ専用の建材通販サイト。総合建築資材商社の野原産業が運営する。 - モノタロウ
オープン当初は工具や消耗品といった間接資材を中心に取り扱っていたが、その後建材の一部も幅広く取り扱うようになっている。住友商事と外資企業の出資により発足。2016年度12月期の売上高は696億円となった。 - DUCT SHOP
空調・ダクト部材専門のメーカー直営ECサイト。メーカー直営ならではの、専門性の高い商品を含めた品ぞろえを誇る。一般的な建材ECサイトやホームセンターでは手に入らないダクト部材も取り扱う。
このように、それぞれの特徴や特色、強みを前面に出し、それを生かしている建材ECサイトが高評価を受けていると見られます。いまや「ECサイトを持つかどうか」から「どのような特色を持ったECサイトにするか」という点が重要になっているのです。
サービスの手法を工夫するか、膨大な品ぞろえによって流入を増やすか、または特定のものに特化しニッチな分野で専門性を出すか。今後一層、建材を取り扱うEC市場は競争を増し、特色や専門性が競争力の明暗を分けると考えられます。
ECという販売形態の未来
このようにして建材業界はEC市場へ進出してきました。今では建材店のEC進出は珍しくなく、大手ネットモールを見渡すと建材を取り扱うショップは膨大にあります。そのなかには、古くから地元で建材店を営む老舗であったり、建材の卸企業であったりといったような業者が、既存の販売形態から大きく形を変えようとしている姿が見て取れます。スマートフォンやタブレットなどモバイル端末の普及とともに、今後さらにEC化率が伸びていくと予想される建材業界において、EC取引が主流となる時代も近いでしょう。
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