ダクト内を流れる空気の風量は、JISで規格された計算式によって求めることができます。空気調和・換気設備の風量測定方法について規定したJIS A 1431についての概要と、具体的な計算方法を解説します。
ダクト内の風量計算に関する規格
ダクト内の風量計算方法はJIS A 1431に規格されています。
JIS A 1431は空気調和・換気設備の吹出口、吸込口における風量を実地において測定する方法を規格したものです。また、測定に関する器具、条件はJIS B 8330に規格されているものもあります。
この規格は1974年に建築部会風量測定法専門委員会に制定されました。当時の委員長は、東京大学生産技術研究所の空調調和衛生工学者、のちの東京大学名誉教授、勝田高司氏が務めました。また、大気社や三機工業、高砂熱学工業など、空調設備工事の大手企業からも委員が選出されました。
ダクト内の風量測定・計算方法
ダクト内を流れる風量は、次の2つの値が分かれば求められます。
- ダクトの断面積
- ダクト内を流れる空気の風速
しかし実際は、場所によって異なるダクト内の風速を正確に計測することは不可能に近いといえます。そこで単位面積ごとに風速を計測し、平均値をダクト内の風速として扱うことで、必要な風量を求めることができます。
ダクト内の風速を計測する方法は、JIS B 8330に規定されています。ここではダクト内の風速はすでに分かっているものとして進めます。
吸込口における測定法
- 吸込口の内寸と同じ断面のダクトを接続します。
※このダクトの長さはダクトの直径または長辺の2倍とします。
- この状態でダクト入口の中央1点で風速(メートル毎秒)を測定します。
- 測定した風速から、次の式を用いて風量を計算します。
風量(立方メートル毎分) = 60(秒) × 測定風速 × ダクトの断面積
それぞれの単位は次のようになります。
- 風量:m3 /min(立方メートル毎分)
- 測定風速:m/s(メートル毎秒)
- ダクトの断面積: m2(平方メートル)
また、定風量装置が設置されている場合は、JIS B 8330を行った試験表を用いて風量を求めることもできます。
吹出口における測定法
- フード、直管ダクト、風量可変送風機を連結した装置を吹出口に取り付けます。
- 風量 ÷ フードの断面積 ≦ 1m/sとなるようフードは可能な限り大きいものにします。
- ダクト内風速 ≧ 4m/sとなるよう直管ダクト部分は細くします。
- 吹出口から送風します。
- フード内と室内の静圧が等しくなるように風量可変送風機を調整します。
- 直管ダクトの部分で風速を測定します。
- 測定点と数については、JIS B 8330に規格されているものを用います。なお、規格は次のようになっています。
- 角ダクト(矩形(くけい)ダクト)の場合
断面の長方形を16以上の等面積に分け、それぞれの中心点で測定します。ただし測定点の数は区分した1つの長方形の辺の長さが150 mm以下になるようにします。64以上に区分する必要はありません。 - 円管ダクト(円形ダクト)の場合
測定する管路の断面において、互いに直角な直径上での各10点、合計20点を測定します。
- 測定した風速から、次の式を用いて風量を計算します。
風量 = 60 × 測定風速 × ダクトの断面積
ダクト内の風量計算の例(1)―円管ダクト
それでは実際に計算してみます。
円管ダクトにおいて、次の条件のときの風量 (m3/min)を計算します。
- ダクト直径:200mm
- 風速:8m/s
まずダクトの半径を求めます。
ダクト半径 =200÷2=100(mm)==0.1 (m)
よってダクトの断面積は次のようになります。
ダクトの断面積=πr2=3.14×0.1×0.1=0.0314 (m2)
ここで風量を求める計算式に当てはめると
風量=60×風速×ダクトの断面積
風量=60×8×0.0314
風量=15.072 (m3/min)
ダクト内の風量計算の例(2)―角ダクト
次に角ダクトの場合を求めてみましょう。
角ダクトにおいて、次の条件のときの風量(m3/min) を計算します。
- ダクトの短手500mm
- ダクトの長手600mm
- 風速4m/s
ダクトの断面積は次のようになります。ここでは、メートルで計算します。
ダクトの断面積=0.5×0.6=0.3 (m2)
ここで風量を求める計算式に当てはめると
風量=60×風速×ダクトの断面積
風量=60×4×0.3
風量=72 (m3/min)
ダクト内の風量計算とJIS
今回はダクト内部の風量の計算法についてまとめました。ダクトの風量の求め方はJIS A 1431によって規格され、測定機器や測定条件についてはJIS B 8330に規格されています。ダクトの断面積とダクト内部を流れる空気の風速が分かれば、計算から風量を求めることができるということがお分かりいただけましたでしょうか。